憂愁ミッドナイト

眠れない夜に

喪うということ

いつもなんだか大切なものを失ってきたような感覚がする。失ったものが何かと問われれば具体的に答えることはできないのだけど。

 

夏に祖母が死んだ。

その時は悲しいと思わなかった。自分のことを、非情な人間だと思った。涙は流さなかった。

 

祖母は私のことを可愛がってくれていたと思う。母と義母に当たる祖母は仲が悪く、物心ついた頃から母は祖母の悪口を言っていた。

 

だから私と祖母の間に無償の愛情みたいなものはなかったのかもしれない。祖母は従兄弟の中でも一番学歴が良い私が自慢の孫だから贔屓していたのだろうし。

 

ただ、祖母が他界して半年が経つ今になって、ふともう二度と祖父母の家に行くことはないのだと思うと無性に寂しくなることがある。

 

祖父母の家が居心地のいい空間だったかと言われるとそうでもなかった。気を遣わなければいけないし、幼い頃に私たち孫が描いた絵が貼り出されているのもなんとなくわざとらしさを感じて苦手だった。

 

けれどももう二度と行くことがないと思うと、あの居心地の悪さですらどうしようもなく欲してしまう。失うということはそういうことだ。人は失ったものの数ばかりを数えている。

 

仕事に追われる日々やぼんやりと生きている退屈な日常ですら、失ってからその大切さに気づくのだろう。