憂愁ミッドナイト

眠れない夜に

憂いの春

春が嫌いになったのはいつからだろうか。

入学、卒業、入社など人生の大きなイベントがすべて終わってしまったからだろうか。尤も、社会人になる頃にはとうに人生への希望など失っていたが。

 

よく就職活動で、「5年後の自分はどうなっていたいですか」などと聞かれるがあれほど意味のない質問もないだろうと思う。5年後どころか明日のことですら本当は誰にもわからないからだ。

 

5年後の自分。このまま結婚して子供を産んで、長く伸ばした髪を切って3人分の食事を用意し、LINEのアイコンを5年前の自分が見たらダサいと吐き捨てそうな子供との写真にしているのだろうか。それとも恋人と別れ、長い髪を巻いて厚化粧をして裏垢で婚活で出会った男の愚痴をツイートしているのだろうか。

 

前者の未来は今では「贅沢」となった二十年前の普遍的な幸せだろう。ただ、前者の未来を歩んだところで生活から不平不満がなくなるわけではないのだろう。

 

後者の未来を歩んだ場合は言うまでもなく最悪だ。歳を重ねても女でいることを余儀なくされ、物件でも決めるように見定められるなんて想像しただけで気持ちが暗くなる。きっとその人生を歩んだら既婚子持ちの友人の愚痴を聞いて、「自分は孤独だけど自由だ」と言い聞かせて無理やり己を納得させる日々になるだろう。

 

春になれば卒業式で袴姿の子たちをたくさん見ることになるだろう。会社には新入社員も入ってくる。何も変わらない自分と、変わっていく下の世代。春はやっぱり憂鬱な季節だ。